関口尚「空をつかむまで」 [日本の小説]
昔,
「創作少年少女小説」という舌を噛みそうな名前のシリーズが,
実業之日本社という場違いな出版社から出ていたと思う。
記憶はほとんどモヤの中だけれど,
その後講談社で文庫になった山中恒(やまなかひさし)の「ぼくがぼくであること」も,
そのシリーズの1つだったように記憶している。
学研の「学習」に連載時,
全国のPTAから非難ゴウゴウだった問題作である。
でも,大人になって読んでも,全然古さを感じない。
それどころか,ますます深さを感じる名作だと思う。
で,
当時住んでいた横浜の公団住宅の,
今にして思えば貧弱な商店街の一角にある
これまた貧弱な本屋さんの棚に,
その舌を噛みそうな名前のシリーズは並んでいた。
団地とその周辺しか知らない小学生の私は,
本を読みたければその本屋さんの本を
片端から読むしか選択肢はなかったのだが,
それにしても読む本読む本ぜ~んぶ,
ちょっとだけ大人びていてせつなく,
しかもわくわくどきどき面白かったのは,
ほとんど奇跡的である。
さて,
関口尚(せきぐちひさし)という人の書いた「空をつかむまで」というこの本。
毎日寄る本屋さんで,たまたま手にした1冊。
これがまさしく,「創作少年少女小説」のテイストなのである。
筆者は1972年生まれというから,今年で35歳。
登場人物である中学生からすれば,立派な「おじさん」だろう。
ところがこの話,まさしく中学生が語っているとしか思えないのである。
それほどフレッシュで,それでいて悩み多く,なおかつ元気を与えてくれる。
ストーリー展開は単純で,
まあ話の筋は読めるなあ,なんて思って読んでいると,
予想を裏切るのではなく,予想通りに進みながら,予想を超える。
その快感♪
思わず涙を流し,そして元気になる。
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