佐々木譲「制服捜査」 [日本の小説]
「ハードボイルド」という言葉は,
チャンドラーが代表しているだろう。
「背が高いわね」
「僕のせいじゃない」
ここで「うるさい」とか「ふざけんな」とか言ったら,
全然かっこよくはない。
言いたいことを我慢したからこそ,
かっこいいのである。
これぞまさしくハードボイルド。
つまり,ハードボイルドの真骨頂は「我慢」にあり,なのである。
さて,佐々木譲の「制服捜査」
佐々木譲は,
「ベルリン飛行指令」以来,
基本的に「まじめなハードボイルド」な主人公を
作り出してきた作家である。
で,この「制服捜査」。
5作からなる連作短編集。
「このミス」2006年第2位なのだそうな。
北海道警察の「不祥事」によって
無理くりの人事異動があり,
やりての刑事が,「平和な」町の駐在にされてしまった。
しかるになぜ「平和」だったかというと,そこにはカラクリがあり…
で,主人公の川久保篤巡査部長は,
我慢に我慢を強いられることになる。
それでもその網の目をかいくぐって,
やるべきことはきっちりやっているのである。
ちょいと破天荒さには欠けるけど,
逆にそこにリアリティがあって,
耐えに耐えて,挙句一線を超える,
その覚悟がまた,
う~ん,ハードボイルド…
と思わせるのである。
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